サスペンス・ホラー

怖い話『夜のジョギング』

 

その日、会社からの残業帰りに、いつもと違う道を通ってみることにしました。

それは運河と並行している遊歩道です。

顔の高さぐらいある堤防沿いに自転車を走らせ、夜風を楽しんでいました。

 

前方の陸橋から車のライトが飛び込んできました。

ふと脇を見ると、堤防フェンスからひょっこりと突き出す形で、人の頭がライトの中に照らし出されていました。

わたしは一瞬驚きましたが、堤防の向こう側にも船が係留するための足場が続いていることを思い出しました。

どうやらジョギングをしているようです。

その人はわたしの自転車と、同じスピードで走っています。

目が合うと、その目がニコッと笑いかけてきます。

 

車のライトが逸れ、辺りは再び元の暗さに戻りました。

横を見ると、さっきまでの人がいません。

 

‐ 急に暗くなって踏み外して、運河に落ちた?! ‐

 

わたしは慌てて自転車を停め、フェンスから身を乗り出して運河を覗き込みました。

そこのフェンスは足場から、ゆうに3メートルはある高さになっていました。

 

文章:百百太郎

 

関連記事

関連記事

  1. 怖い話『スリッパ』
  2. 怖い話『案山子』
  3. 怖い話『新聞の勧誘』
  4. 怖い話:『13階』
  5. 怖い話『死体現場ごっこ』
  6. 怖い話:『走る男の子』
  7. 怖い話『小さな靴下』
  8. 怖い話『いつから?』

おすすめ記事

薬の副作用が副作用でなくなり、主作用になることがある

 薬の薬効より、副作用の有用性に注目がされて、副作用を主作用にして使われる薬がありま…

じゃがりこの種類

 「じゃがりこ」は、カルビー株式会社が製造・販売している、じゃがいもを主原料としたス…

ショートショート『庶民が大金を入手した末路』

  藤原綾香は宝くじで一等を当てた。彼女の目の前にはトランクケースに入った三億円が置かれている。…

『大人になると…』―大人になると素直に謝れない―

子供の時に…喧嘩をしても…数分経てば…&…

社会は多数派のためにある

 社会では健常者と障碍者と呼ばれる人たちが生活を送っている。 健常者と障碍者の定…

新着記事

PAGE TOP