その日、会社からの残業帰りに、いつもと違う道を通ってみることにしました。
それは運河と並行している遊歩道です。
顔の高さぐらいある堤防沿いに自転車を走らせ、夜風を楽しんでいました。
前方の陸橋から車のライトが飛び込んできました。
ふと脇を見ると、堤防フェンスからひょっこりと突き出す形で、人の頭がライトの中に照らし出されていました。
わたしは一瞬驚きましたが、堤防の向こう側にも船が係留するための足場が続いていることを思い出しました。
どうやらジョギングをしているようです。
その人はわたしの自転車と、同じスピードで走っています。
目が合うと、その目がニコッと笑いかけてきます。
車のライトが逸れ、辺りは再び元の暗さに戻りました。
横を見ると、さっきまでの人がいません。
‐ 急に暗くなって踏み外して、運河に落ちた?! ‐
わたしは慌てて自転車を停め、フェンスから身を乗り出して運河を覗き込みました。
そこのフェンスは足場から、ゆうに3メートルはある高さになっていました。
文章:百百太郎
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