かつて、わたしの父親の田舎の町外れに断崖がありました。
結構な景観で、わたしもガードレールから身を乗り出して、波打ち際を覗き込んだりしたものです。
ちょっとした観光スポットにもなりうるところでした。
それと同時に自殺の名所でもあったのです。
そこから人が飛び降りてしまうのです。
従兄がそこで死体を見つけて騒ぎにもなったこともあるほどです。
そんな断崖も20年ぐらい前に地域開発のため削られ、あとに遊歩道が作られました。
断崖を火薬を使って切り崩す様子はテレビでも紹介されました。
断崖がなくなったことで、自殺志願者はまったく来なくなりました。
しかしそれに変わって、怪奇現象が起きるようになったというのです。
その遊歩道を歩いていると、突然上から人影が落ちてきて、
― ファッ!! ―
と身をかがめるものの、何もないという事が起きるのだそうです。
そこはよくタヌキが出没する地域でもあります。
タヌキのイタズラかも知れませんがね。
文章:百百太郎
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