アパートでひとり暮らしの友人の話です。
夏の暑い夜に窓を少し開けて寝ていました。
窓の外から何やらボソボソと話し声が聞こえてきました。
「ここ、いい感じじゃない?ここにしましょう」
友人は寝ボケていると思ってそのまま寝入ろうとしました。
するとまた、
「ちょっと通りますよ」
と、声がして頭の上を何かがスタスタと通り過ぎる気配がしました。
それでも友人は「ああ、やっぱり俺は寝ボケているのだな・・・」と思って寝入ろうとしました。
ですが、どうも気になって眠れません。
思い切って起き上がり、部屋の中をあちこち調べてみました。
すると、お風呂の脱衣かごの中に、
猫がいました。
友人はその猫に
「おまえ、しゃべれるのか?ここはペット禁止だ。少しの間ならいいが、すぐに出て行ってくれ」と言い残してその夜は寝ました。
しばらく猫にエサを与えていたが、何日かしたらいなくなったそうです。
友人は最後にポツリと言いました「その猫、やっぱり全然しゃべらんのよ。あの声は誰やったんやろか?」
文章:百百太郎
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