サスペンス・ホラー

怖い話『取りに来て』

 

友人の家を出て、しばらくしてから忘れ物したことに気付きました。

引き返しながら電話をかけると、「取りに来て」と言う返事でした。

 

  • よかった、出かけてない -

 

玄関を開けて、「取りに来たよ」と声をかけると、「取りに来て」という返事が返ってきました。

それは2階からしました。

 

  • 忘れ物したのは1階なのに、なんで2階? -

 

わたしは玄関横の階段から2階を見上げました。

2階で友人が横向きに正座して、顔を背けていました。

 

何か様子がおかしいと思いながらも、わたしは靴を脱ぎ、階段を上りはじめました。

途中まで上がったところで、その人は友人じゃないと気付きました。

 

  • 誰? -

 

と思いながら、下から顔を覗き込もうとしますが、背けているため見えません。

その時、下から声がしました。

 

「どうしたの?」

 

見ると友人がわたしを見上げていました。

 

「忘れ物なら、こっちだよ」

 

階段を下りながら、振り返ると、さっきの人はもういませんでした。

 

文章:百百太郎

 

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