サスペンス・ホラー

怖い話『駆け込んできたもの』

 

わたしは公衆トイレで、小便器に向って用を足していました。

そこへ凄い勢いで、駆け込んできた人がいました。

わたしの背後に4つ並んでいる、個室のいずれかに飛び込んでいきました。

 

わたしが用を足し終えたタイミングで、声がしました。

 

「ドア、閉めて!」

 

- 自分でドアも閉められないくらい、切羽詰ってたのか -

 

振り返ると、わたしの真後ろ、その両隣が自然と視界に入ります。

が、そのどれもドアが開きっぱなしで、中に人のいる様子はありません。

 

- 一番奥の個室に入ったんだな -

 

わたしは中の様子を見ないように、ドアを閉めました。

 

 

洗面台で手を洗っているところへ、人が入ってきました。

その人はスタスタと一番奥の個室のドアの前に立ち、ドアノブに手をかけました。

ドアは何事もなく開きました。

 

- あーあ、あの人、鍵掛けてないよ -

 

と、思って見ていると、その人はそのままスッと、中へ入っていきました。

そして、ドアの鍵をカチャッと閉めました。

 

文章:百百太郎

 

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