大学のサークルの女子が、小学校時代にプールに行ったときの事を話してくれた。
更衣室で着替えをしていると声がした。
「○○ちゃん、いる?」
友達とグループで来ていたのだが、グループとは違う友人の声だ。
声からして同じクラスのAであることがすぐにわかった。
おそらく、あとからプールに来て、他の子からわたしも来ていると聞き、声を掛けてきたのだろう。
ここの更衣室は足元が見えるような仕切りになっている。
その仕切りの下から、花をあしらった白とピンクのサンダルが見える。
くるぶしにふたつ並んだほくろが目立つ。
「今ちょっと手が離せない、すぐ出る」
「○○ちゃん、いる?」
「うん、すぐ着替え終わるから、ちょっと待って」
「○○ちゃん、いる?」
「ちょっと、待ってって」
着替え終わる寸でのところで、Aは走り去ってしまった。
友人達にAのことを聞くと、
「A来てたの?知らなかったー」という返事だった。
後日、Aと会ったときに、プールでのことを聞いてみた。
彼女はその日はプールに行っていないという。
「別の人と間違えてるんじゃない?」
というAに、白とピンクのサンダルとくるぶしのホクロのことを話した。
するとAは言った。
「あっ、それ、わたしの足だ」
文章:百百太郎
関連記事