サスペンス・ホラー

怖い話『隣のスナック』

 

父は一時期、幼いわたしを川向こうの商店街の寿司屋に連れて行ってくれました。

 

その寿司屋の奥の扉を開けると、長い通路がありました。

その左右が居住スペースになっており、そこを通り抜けた先トイレがありました。

トイレの横に建物の出口があり、幅1メートルほどの路地を挟んで隣の建物の扉がありました。

そこはスナックの裏口になっており、そこから時折歌声も聞こえてきました。

 

幼かったわたしはトイレで用を済ました後、わざとそこの扉を開いて店内の人の反応を窺って楽しんでいました。

 

ある時、父と一緒にトイレに立ったときに、父の制止を聞かずにスナックの扉を開けました。

扉を開けると室内が真っ黒で、まるで火事のあとのようでした。

 

父の話では、そこはだいぶん前に、小火を出してからずっと放置されたままなのだそうです。

わたしは狐につままれたような気持ちでしばらく立ちすくんでいました。

 

今思えば、向こうもそんなわたしの反応を見て、楽しんでいたのかもしれません。

 

文章:百百太郎

 

関連記事

関連記事

  1. 怖い話『震える犬』
  2. 怖い話『何にぶつかったのかわからない』
  3. 怖い話『手遅れ』
  4. 怖い話『古い写真』
  5. 怖い話『そうですって言っていたら・・・?』
  6. 怖い話『開けてください』
  7. 怖い話『電話が鳴った』
  8. 怖い話『もうひとりいたはず』

おすすめ記事

『不安になる事もある』―不安は、あなただけじゃないー

不安は、誰にでもある。だから…それを…&…

もちつけ

もちつけとは、もう少し落ち着けという意味だそうです。時間を効率的にとは、誰もが考えることです…

神戸新聞に「あまうめ城っぷ」の記事が掲載されました!

画像:収穫前の尼崎農業公園の梅の実神戸新聞の2022年8月15日付朝刊に、あまう…

年内にコロナワクチンの飲み薬ができるかもしれない

 塩野義製薬の手代木社長が、年内にコロナウイルスの飲み薬の「条件付き承認」を年内に申…

大相撲の十両、幕下の入れ替えは誰になるのか(2023年5月場所)

出典:Photo credit: alek_2 on VisualHunt十両、幕下の入れ替え予…

新着記事

PAGE TOP