サスペンス・ホラー

怖い話『手伝ってくれた人』

 

水道工事会社でバイトしていたときのこと。

その時、わたしは倉庫で用具の整理を頼まれていました。

用具箱に入っている、見慣れない用具を仕分けして、棚に戻しておくのです。

 

すると、相方の人が入ってきて、急に出動することになったから、用具箱を準備しておくようにと言われました。

 

なかなか仕事が覚えられないでいたわたしは、よく怒られていました。

その時もわたしは、これとこれとと頼りない記憶と、ぎごちない手つきで用具箱に必要な用具を入れていきます。

 

  • これでよかったのかな? -

 

顔を上げると、いつの間にか奥に人がいました。

こちらに背を向け、棚に向かって何やらゴソゴソしています。

わたしはその人に確認してもらおうと、

 

「すいません、用意するものってこれでよかったですか?」

 

と声をかけました。

 

すると、その人はスッと後ろ手にレンチを渡してきました。

わたしはそれを受け取って道具箱に入れたところで、相方の人が飛び込んできました。

 

「いくぞ!」

 

「持っていくものってこれでよかったですか?」

 

「お、いいじゃん!いくぞ!」

 

部屋を出る際に礼を言おうと振り返ると、さっきの人はいませんでした。

 

文章:百百太郎

 

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