買い物に行く途中、看板屋があります。
その看板屋の前に、見慣れない男の子が立っていました。
白い顔をして口元の近くにパンのようなものを持って、全く微動だにしません。
パン屋の看板人形かな? -
その前を通る際に、
「よくできた人形だな」
などと思いながら、身をかがめて顔を覗き込みました。
目玉が動いてこちらをギロッと見ました。
- あ、人だった! -
わたしはそそくさと、その場を離れました。
しかし、しばらく進んだところで、わたしは忘れ物に気づきました。
今来た道を引き返し、再びさっきの看板屋の前を通ります。
すると、看板屋の中から何やら声が聞こえてきました。
「ここにあったパンどこいった?おまえ、食べた?」
「知らないよ、ネズミが持って行ったんじゃないの?」
それは看板屋の夫婦の会話でした。
見ると、さっきの男の子が手に持っていたパンが消えていました。
それはすっかり目も動かない、ただの看板人形になっていました。
文章:百百太郎
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