サスペンス・ホラー

怖い話『闇の中のヒモ』

 

大学からの帰り、先輩の下宿に寄っていくことになった。

大学の先輩の下宿は、トイレと風呂は共同です。

 

「おれ、ちょっとトイレ行ってくるから、先に部屋に行ってろ」

 

と先輩が、言いました。

 

わたしは先に、2階の先輩の部屋へ向かいました。

部屋に入ると、雨戸を閉め切っていたため、真っ暗で何も見えません。

 

わたしは手探りで、蛍光灯のヒモを探しました。

 

  • この辺かな? -

 

蛍光灯のヒモを、ビニールヒモで延長してあるのです。

ヒモのようなものが手に当たりました。

ビニールヒモが相当くたびれているようで、もうゴワゴワです。

 

わたしはそれを掴むと、引っ張りました。

しかし、明かりがつきません。

何度やっても点かないので、首をかしげているところへ先輩が入ってきました。

 

「電気、点かないんですけど」

 

「ああそれな・・・」

 

先輩はコタツの上を手探りしました。

 

- ピッ -

 

リモコンで点灯させました。

 

「最近、(天井張り付き型の)シーリングライトに変えたんだよ」

 

そこにはヒモなど下がっていませんでした。

さっき暗闇の中で、わたしが掴んだヒモは一体何だったのか?

わたしは先輩には黙っていました。

 

文章:百百太郎

 

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