サスペンス・ホラー

怖い話『お入りください』

 

いつものように、病院にやってきました。

月1回は診察を受けて、お薬をもらうのです。

 

ドアを開け、スリッパに履き替えて、待合室に入ると薄暗くなっていました。

誰もいません。

受付にもいません。

 

- まだ診察前か?早く来すぎたのかな? -

 

変に思いながらも、診察券を受け付けのテーブルに置き、椅子に座っていました。

 

「○○さーん」

 

と奥からわたしを呼ぶ声がしました。

見ると、受付にはやはり誰もいません。

わたしの診察券もそのままです。

 

- 聞き間違えかな? -

 

と思っていると再び、

 

「○○さーん、○○さーん、どうぞお入りくださーい」

 

立ち上がって診察室に行こうとすると、背後から声がしました。

 

「何してるんですか?」

 

振り返ると、顔なじみの看護婦さんが私服姿で立っていました。

 

「呼ばれたんで行こうかと」

 

「今日は休診日ですよ」

 

診察券をあらためて確認すると、休診日でした。

 

「奥からわたしを呼ぶ声がしたんですけど?」

 

「誰もいませんよ」

 

と言った次の瞬間、看護婦は「ああ!」と思い出したように、

 

「そう言えば、業者が棺おけを持ってきてたんです。

それが呼んだんでしょうかね」

 

文章:百百太郎

 

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