サスペンス・ホラー

怖い話『飛んでいるもの』

 

学生時代に住んでいたアパートで、不可解なことが度々ありました。

時折ラップ音がしたり、窓は閉まっているのにカーテンが揺れたりするのです。

 

ラップ音は古い木造アパートだったので、木材が軋んでいるのだろう。

カーテンが揺れるのは、特に害は感じなかったので、気にしなければいいという考えでいました。

 

ある時、話を聞いた友人が、霊感があるという男を連れてきました。

男は部屋に入るなり、

 

「ひえっ、よくこんなとこに住んでるなぁ」

 

と言うのです。

男は、部屋の中に赤ん坊が飛び回っているといいます。

カーテンが揺れるのは、赤ん坊が通り過ぎたから。

ラップ音は攻撃してくる音だという。

 

疑うわたしを置いて、男は部屋の中に入って行きました。

すると、ピシッピシッと音が鳴り始めました。

 

外に出ると男はシャツを脱ぎ、背中を向けました。

背中に赤く赤ん坊の手形が付いていました。

わたしはその日のうちに、大家さんに申告して、隣の部屋に移りました。

 

翌春、新入生がそこに入居してきました。

わたしは怪現象のことは黙っていました。

かわりに、大家さんからお小遣いをいただきました。

 

文章:百百太郎

 

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