サスペンス・ホラー

怖い話『看板人形』

 

買い物に行く途中、看板屋があります。

その看板屋の前に、見慣れない男の子が立っていました。

白い顔をして口元の近くにパンのようなものを持って、全く微動だにしません。

 

  • パン屋の看板人形かな? -

 

その前を通る際に、

 

「よくできた人形だな」

 

などと思いながら、身をかがめて顔を覗き込みました。

目玉が動いてこちらをギロッと見ました。

 

  • あ、人だった! -

 

わたしはそそくさと、その場を離れました。

 

しかし、しばらく進んだところで、わたしは忘れ物に気づきました。

今来た道を引き返し、再びさっきの看板屋の前を通ります。

 

すると、看板屋の中から何やら声が聞こえてきました。

 

「ここにあったパンどこいった?おまえ、食べた?」

 

「知らないよ、ネズミが持って行ったんじゃないの?」

 

それは看板屋の夫婦の会話でした。

 

見ると、さっきの男の子が手に持っていたパンが消えていました。

それはすっかり目も動かない、ただの看板人形になっていました。

 

文章:百百太郎

 

関連記事

関連記事

  1. 怖い話『手が届かない』
  2. 怖い話『誰のお母さん?』
  3. 怖い話:『見える人、見えない人』
  4. 怖い話:『転校初日の出来事』
  5. 怖い話『死体現場ごっこ』
  6. 怖い話『物が無くなる部屋』
  7. 怖い話『持っていくな』
  8. 怖い話『こぼれる光』
PAGE TOP