サスペンス・ホラー

怖い話『こぼれる光』

 

小学生の頃、取り壊し前の木造アパートへ、友人たちと探検に入った時のこと。

かなり古いアパートで、各部屋の入り口は、薄い木の引き扉になっています。

 

そのアパートの一室でわたしたちは、友人のひとりが持ち込んだ、カードゲームに夢中になっていました。

気づくと、いつの間にか陽が傾いて、室内が薄暗くなっていました。

 

引き揚げようとすると、扉の向こう側から、わいわいと人の気配がしました。

大人たちの話し声に混じって、子供の声もします。

 

‐ アパートのオーナーでも、来てるのか? ‐

 

どうやら懐中電灯を持ち込んでいるようで、引き扉の隙間から光がこぼれてきます。

わたしたちは見つかるとまずいと思い、息をひそめました。

 

声はだんだん近づき、しだいに扉の前を通り過ぎ、そして遠ざかっていきました。

 

やがて、人の気配が消え、光もなくなりました。

今のうちに退散しようと、わたしはさっきまで光がこぼれていた引き扉の取っ手に手を掛けました。

 

扉をそーっと開けると、そこは押し入れでした。

そこで私たちが目にしたのは、放置された、いくつもの位牌でした。

 

文章:百百太郎

 

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