サスペンス・ホラー

怖い話『廃墟ビルの鉄扉』

 

子供の頃、仲間と取り壊し直前の廃墟ビルに、探検に入った時のことです。

各階の廊下の突き当たりに鉄扉があり、その手前に、工事現場でよく見かける赤いカラーコーンが、置いてありました。

 

4階までくると、

 

「その扉、ちょっと開けて外、覗いてみろよ」

 

と友人が言いました。

 

わたしは、言われるまま開けてみました。

そこは階段も何も設置されていない、断崖絶壁になっていました。

鉄の非常階段があったのが、先に撤去されてしまったのでしょう。

知らずに開けて、一歩踏み出せば、そのままストーンと転落です。

 

「ひええええええ、こえええええ」

 

わたしは腰を抜かして、その場にしゃがみこんでしまいました。

 

やがて、落ち着きが戻り、扉を閉じてドアロックをしました。

その場を立ち去ろうとすると、

 

- ガチャガチャガチャ -

 

と、鉄扉のドアを開けようとする音がしました。

振り返って見ると、ドアノブが激しく音を立てていました。

 

わたしたちは互いの顔を見合わせると、我先にと階段を駆け下りていきました。

 

文章:百百太郎

 

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