わたしは電車のドアの前で、スマホをいじりながら立っていました。
駅に停車し、ドアの向こう側に女の人が立っているのが見えたので、脇によりました。
しかし、ドアが開いても女の人は乗り込もうとはしません。
肩にかけた赤いショールが印象的です。
- 急行を待ってるのかな? -
間もなくドアが閉まり、電車は走り出しました。
次の駅に停まりドアが開くと、またそこに女の人が立っていました。
その人も赤いショールをかけていました。
それはさっきと同じ人のように思えました。
脇によって道をあけましたが、その人も乗り込まず、そのまま電車は走り出しました。
まさかと思いながら、次の駅の到着を待っていると、やはり赤いショールの女の人が立っていました。
ドアが開いても乗り込もうとはしません。
思わず女の人と目が合いました。
その時、女の人は微笑を浮かべて言いました。
「さっきから、あなたが降りてくるのを待ってるんですけど・・・」
その次の駅では反対側のドアが開きました。
わたしは迷わず電車から降りました。
文章:百百太郎
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