サスペンス・ホラー

怖い話『事故物件での出来事』

 

不動産屋で働く友人の話。

 

興味本位で事故物件を求めてくる客がたまにいるそうです。

そういう人はたいがい、そこでの生活をリアルタイムでネット配信したり、動画をアップするのが目的だとか・・・。

ある客が、事故物件でもいいから格安の部屋はないかと訪ねてきました。

 

友人は、早速あるアパートへ案内しました。

その客は部屋の中に入ると、

 

「ちょっと、壁が薄いんですかねぇ?」

 

赤ん坊の声がすると言います。

 

友人には耳をすましても、何も聞こえてきません。

 

友人は、ここで母親が赤ん坊と無理心中する事件があったこと、

これまで事故物件と知りながら入居しても、すぐ出て行ってしまうことを話しました。

 

「私にしか感じないんじゃ意味ないですね」

 

やはり映像や音が残るようでないと意味がないと言います。

そのお客はそそくさと部屋を出ようとしました。

部屋を出たところで、その場に立ち尽くし、部屋の中を振り返りながら聞いてきました。

 

「無理心中のお母さんはずいぶん髪の長い人だったんですね」

 

「どうしてわかるんです?」

 

「いま、私の顔に髪の毛が当たりました」

 

文章:百百太郎

 

関連記事

関連記事

  1. 怖い話『夜中の路線バス』
  2. 怖い話『眠る男』
  3. 怖い話『ガラス越しのポスター』
  4. 怖い話『もうちょっとだったのに』
  5. 怖い話『仏間の少女』
  6. 怖い話『デジャブ』
  7. 怖い話『畑の中に佇む女』
  8. 怖い話『壁の中から』

おすすめ記事

若さを保つ秘訣

人は、いつまでも成長していけると思います。常に向上心…

未来の障碍者支援(予想)

二〇三〇年、障碍者支援(A型、B型、就労移行)に対する法律が施行された。内容は以下の…

フィクションのお仕事

疲れ果てている時に限って、無駄に悶々とするのは、オスの本能なのか? という疑問について(挨拶)。…

怖い話『体育倉庫の子ら』

小学校の時のこと。休み時間に仲間たちと鬼ごっこをして遊んでいまし…

ジコチューで行こう!

『ジコチューで行こう!』「ジコチューで行こう!」を聴いて思い出し…

新着記事

PAGE TOP