サスペンス・ホラー

怖い話『水の中へおいで』

 

友人とその弟君と、へ泳ぎに行ったときのこと。

 

その湖は、浜辺から少し沖合いのところにポツンと台が組んであって、そこから飛び込めるようになっていました。

わたしたちが浅瀬で遊んでいると、泣き声が聞こえてきました。

見ると、台の上で友人の弟君が泣いています。

弟君はまだ小学3年生ですが、スイミングスクールに通っていて、泳ぎはかなり達者で、私たちの中では一番うまいくらいです。

 

わたしたちはそちらへ泳いで向いました。

 

弟君に聞くと、いざ飛び込もうと水面を覗き込むと、女の人が水の中で手を広げて、弟君を待ち構えていたと言うのです。

弟君はすっかり脅えてしまって、自力では泳げなくなっていました。

 

何年も前に、その近くで母子の入水心中事件があったそうです。

子供の遺体はすぐに発見されたそうですが、母親は行方不明のままなのだそうです。

彼女は今も、離れ離れになった子供を捜し求めて、水の中をさ迷ってるのかもしれません。

 

文章:百百太郎

 

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