仕事終わりにスーパーに寄ってからの帰りのこと。
狭い路地を歩いていると、突然、前方の物陰から小さな女の子が顔を出し
「こっちだよ」
と言いました。
後ろを振り返るが、わたし以外誰もいません。
― 誰かと間違えてるのか? ―
その子はわたしの先を軽い足取りで、スキップを踏むように楽しそうに進んでいきます。
路地を出たところで女の子を見失ってしまいました。
わたしが進みたい方向へと行こうとすると、
「こっちだよ」
再びわたしを誘う声がしました。
わたしの足は自然と声のする方へと向きました。
いくつもの民家の間を通り抜け、角を曲がったところでわたしの目に飛び込んできたのは、献花台でした。
そこにはたくさんの花束やお菓子、ジュース、絵本などがお供えされていました。
それを見た瞬間、近所で幼女虐待死事件が起きたというお昼のニュースを思い出しました。
わたしはレジ袋からスナック菓子を取り出しお供えして、手を合わせました。
文章:百百太郎
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