小学生の頃、空き地で三角ベースボールをしていた時のこと。
ボールが開いた窓の中に飛び込んでしまいました。
中を覗くと、男の人が仰向けになって昼寝していました。
ボールは部屋の隅に見えます。
「すいませーん、ボール入っちゃったんですけど」
と呼びかけてみました。
すると男の人は頭をむくりともたげて
「入ってない」
ぶっきらぼうに言うと、そのまま、また寝てしまいました。
どうやらその人に頼むのは無理のようです。
別の家の人に頼んで、ボールを返してもらおうと、表玄関に廻りました。
するとそのお宅は、祭壇を運び込んだり、花輪の取り付けなどお通夜の準備をしていました。
― さっきの人は身内に不幸があったので、不機嫌だったのか ―
ボールを取ってくれとは言いにくい状況です。
わたしたちは再び窓側に廻りこみました。
― すぐそこにボールあるのになぁ ―
と怨めしく思いながら、部屋の中を覗いていると、
葬儀屋らしき黒服の人が入ってきて、寝ている男の人の顔に、白い布をかぶせました。
文章:百百太郎
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