大学も夏休みに入り、2年ぶりに帰省したときのこと。
2年ぶりということもあり、お隣の坊やもすっかり大きくなっていました。
念願の第一子ということもあって、かわいくって仕方がないのでしょう、移動するときはいつも、自転車のチャイルドシートに坊やを乗せています。
すれ違う際にはいつも、お母さんとは「こんにちは」と声を掛け合います。
坊やは恥ずかしいのか、お母さんの背中にぴったりと顔をつけています。
あるとき、パート先から戻った母親に、
「お隣の母子って、いつも一緒だね」と言うと、
母親は不思議そうにわたしを見てきました。
「あのお宅の坊や亡くなったよ」
半年も前に病気で、亡くなっていると言うのです。
わたしがいつも見かけると言うと、
「その子、どんな顔してた?」
それから、数日後の雨の日にその母子とすれ違いました。
母親は雨具を着込んで、自転車に乗っていました。
母親の背中に顔をうずめた子供は、雨ざらしになっていました。
文章:百百太郎
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