サスペンス・ホラー

怖い話『チャイルドシート』

 

大学も夏休みに入り、2年ぶりに帰省したときのこと。

 

2年ぶりということもあり、お隣の坊やもすっかり大きくなっていました。

念願の第一子ということもあって、かわいくって仕方がないのでしょう、移動するときはいつも、自転車のチャイルドシートに坊やを乗せています。

すれ違う際にはいつも、お母さんとは「こんにちは」と声を掛け合います。

坊やは恥ずかしいのか、お母さんの背中にぴったりと顔をつけています。

 

あるとき、パート先から戻った母親に、

「お隣の母子って、いつも一緒だね」と言うと、

母親は不思議そうにわたしを見てきました。

 

「あのお宅の坊や亡くなったよ」

 

半年も前に病気で、亡くなっていると言うのです。

わたしがいつも見かけると言うと、

「その子、どんな顔してた?」

 

それから、数日後の雨の日にその母子とすれ違いました。

母親は雨具を着込んで、自転車に乗っていました。

母親の背中に顔をうずめた子供は、雨ざらしになっていました。

 

文章:百百太郎

 

関連記事

 

関連記事

  1. 怖い話『電話が鳴った』
  2. 怖い話『ドアが開けられないの』
  3. 怖い話:『転校初日の出来事』
  4. 怖い話『停電』
  5. 怖い話『音が鳴る』
  6. 怖い話『駆け込んできたもの』
  7. 怖い話『廃墟ビルの鉄扉』
  8. 怖い話『開けてください』

おすすめ記事

詩:『古書店の主人』

二階建ての建物二階部分はアパート一階は古書店…

経験することの大切さ

実際に行動して初めてわかることがあります。筆者は、疲れやすい身体であると思っていました。…

前しか向かねえ

『前しか向かねえ』今回はAKB48の楽曲から選びました&nb…

障碍者の叫び

 日本では障碍に対する差別意識が根強く残っている。相手が見えないインターネットは顕著…

高校選抜2021の明治神宮枠は、21世紀枠に割り振られる

 高校野球選抜の明治神宮枠は、21世紀枠に割り振られることとなった。これにより、21…

新着記事

PAGE TOP