アパートの3階に住んでいる友人の話。
自宅に帰ってくるとスリッパが玄関にないことが、よくありました。
最初はあまり気にしていませんでした。
― 急いで家を出るときに、無意識に玄関まで履くのを忘れているのだろう ―
と思っていました。
ある時、玄関にスリッパを揃えて家を出ても、戻ってくると移動していることに気付きました。
居間だったり寝室だったり、見当違いのところにそろえて置いてあるのだそうです。
― もしかして前の住人が合鍵を作ってあって、知らぬ間に部屋に入り込んでる? ―
と、そんなことを考え始めた頃です。
仕事から戻ると自宅が火事になっていました。
隣の部屋からのもらい火事です。
ベランダの窓際に人影が見えました。
誰か中にいるのか?と聞かれましたが、そんな人はいないと答えました。
間もなく火は消し止められ、友人の部屋は一部が燃えただけで済みました。
見ると、ベランダにスリッパが並んでいました。
それ以降、スリッパが勝手に移動してることは無くなったそうです。
友人は言いました。
「あの火事でオバケはベランダから逃げたのかもしれないな」
文章:百百太郎
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