サスペンス・ホラー

怖い話『スリッパ』

 

アパートの3階に住んでいる友人の話。

 

自宅に帰ってくるとスリッパが玄関にないことが、よくありました。

最初はあまり気にしていませんでした。

 

― 急いで家を出るときに、無意識に玄関まで履くのを忘れているのだろう ―

 

と思っていました。

 

ある時、玄関にスリッパを揃えて家を出ても、戻ってくると移動していることに気付きました。

居間だったり寝室だったり、見当違いのところにそろえて置いてあるのだそうです。

 

― もしかして前の住人が合鍵を作ってあって、知らぬ間に部屋に入り込んでる? ―

 

と、そんなことを考え始めた頃です。

 

仕事から戻ると自宅が火事になっていました。

隣の部屋からのもらい火事です。

ベランダの窓際に人影が見えました。

誰か中にいるのか?と聞かれましたが、そんな人はいないと答えました。

 

間もなく火は消し止められ、友人の部屋は一部が燃えただけで済みました。

見ると、ベランダにスリッパが並んでいました。

それ以降、スリッパが勝手に移動してることは無くなったそうです。

 

友人は言いました。

「あの火事でオバケはベランダから逃げたのかもしれないな」

 

文章:百百太郎

 

関連記事

関連記事

  1. 怖い話『なきごえ』
  2. 怖い話『届かないボタン』
  3. 怖い話『いつから?』
  4. 怖い話『夜中のお使い』
  5. 怖い話『農道のトイレ』
  6. 創作『空の上からの悪戯』
  7. 怖い話『地域ルール』
  8. 怖い話『畑の中に佇む女』

おすすめ記事

障碍者支援で当事者がよくなる確率はかなり低い

 障碍者支援は障碍者を支援するための場所なのでしょうか。当事者としてそのように思うこ…

『長くは続かない』

悲しみや苦しみは長くは続かない。その時だけの一瞬の出来事。&…

ボーカロイドの替え歌オススメ3選!

クリプトン・フューチャー・メディアから発売されている音声合成用のボーカル音源を使い、…

🌙来週から週間星座占い始めます!🌙

初めまして!八雲月夜―やくも つきや―と申します。現役鑑定師をしております。…

自分を基準にしたことは人の心に響かない

 人に対して、「よくできる」、「きみはどうしてできないのか」、「若い」、「年を取って…

新着記事

PAGE TOP