サスペンス・ホラー

怖い話『物が無くなる部屋』

 

アパートで一人暮らしの友人がいます。

アパートに越してきてから数か月、概ね快適でしたが、よく「物が無くなる」のだそうです。

 

「ねずみの仕業だと思うんだ」

 

一見ねずみが出入りしそうな隙間とか、なさそうな感じの部屋です。

 

無くなるものは、消しゴムやらボールペンやらマジックのキャップやら、いずれもたいした物ではありません。

から揚げが転がって視界から消えたと思ったら、そのまま行方不明になったこともあるそうです。

 

ある日、わたしがその部屋に泊まったときの事です。

わたしはベッドの友人の隣で、床にマットを敷き、メガネを枕元に置いて寝ていました。

 

夜中に何やら気配を感じて目が覚めました。

見知らぬ女性が椅子に座って、カーテンの隙間から外を眺めていました。

わたしは霊だと直感しました。

その女性の霊はわたしに気付くと、こちらに手を伸ばしてきました。

わたしは目を閉じて必死に念仏を唱えました。

 

朝、わたしのメガネは失くなっていました。

友人に昨夜のことを話すと意外にも、「そうか、そうか」と言う反応でした。

友人は薄笑いを浮かべて言いました。

「それは、ねずみに持っていかれたな」

 

― ねず・・・え、ねず美?・・・ ―

 

その時になって初めて、友人がおかしくなっていることに気付きました。

 

文章:百百太郎

 

関連記事

関連記事

  1. 怖い話『音が鳴る』
  2. 怖い話『ドラム缶』
  3. 怖い話『ヘッドライト』
  4. 怖い話『事故物件での出来事』
  5. 怖い話『作業服の男』
  6. 怖い話『もうひとりいたはず』
  7. 怖い話:『毛』
  8. 怖い話『上に行くよ』

おすすめ記事

創作的2024年の抱負?

うちの親は今年で85歳と高齢なせいか、クレジットカードの仕組みそのものを知りません。で、キャ…

怖い話『開かない襖』

小学校の修学旅行で、お風呂から戻ってくると、布団と枕が部屋の隅に重ねられていた。…

【海外ニュースウォッチ】ブラウザ寡占への対抗【第十七回】

海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。第…

懸賞小説の話とか。

「ぶん殴ってやる!」とは、いささか下品なので、「殴打(おうだ)して差し上げます」と言うのはいかがか(…

兵庫県尼崎市の小学校でコロナウイルス陽性の教員が出勤

 兵庫県の尼崎市でコロナウイルス陽性の教員が出勤 コロナウイルスが陽性であったに…

新着記事

PAGE TOP