中学生の夏休みに仲間とプールへ行ったときのこと。
2レーンのウォータースライダーで友人と競争することになりました。
スライダーの上から見下ろすと、プールサイドに数人が座って、わたしたちをはやし立てています。
わたしは「よーい、ドン」と掛け声をかけ、勢いをつけてスライダーに滑り出します。
水面に向ってどんどん加速していきます。
横で滑っている友人がわたしの視界から消えます。
自分が前に出たようです。
そのまま勢いよく水に飛び込みました。
遅れて友人が飛び込んできました。
水中からも聞こえるほど歓声が沸き上がっています。
わたしが水面から顔を出すと、途端にさっきまでの歓声がなくなり静まり返りました。
見ると、
プールサイドにいた人たちが忽然と消えていました。
周りを見渡しても、わたしたちだけがその場にポツンと取り残されたような状態です。
友人も腑に落ちない顔でわたしに近付いて来ると、
「そこにいた人らはどこへ行った?」
と聞いてきます。
一緒にプールサイドに上がってみるとそこには、いくつものお尻のあとだけが残っていました。
文章:百百太郎
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