海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第二十一回は、「バッテリー用金属の動向」と題して、リチウムやニッケル、コバルトなどの電池用金属に関する動きを見ていきます。
資源ナショナリズムや環境保護活動の高まりというグローバルな波により、ニッケル、コバルト、リチウムといった金属に対する世界的な需要が高まっています。
資源獲得競争が激しくなり、金属資源の豊富な低所得国にとって追い風になりそうです。
グリーン産業革命を追い風にして、こうした金属の生産国は影響力を増しており、その力を自国にとって有利になるように活用しようとしています。
リチウムに大きな注目が集まっています。
アルゼンチンの北西部、チリ北東部、ボリビア南西部の3国の国境をまたぐ地域には、とてつもない量のリチウム資源が眠る塩湖が多く点在しています。
「リチウムトライアングル」と呼ばれるその地域には、電気自動車用バッテリーに欠かせないリチウムの世界確認埋蔵量の、なんと50数%以上が眠っているというのです。
しかしその開発に関してもめごとが頻発しており、リチウムに対する支配とその利益拡大をもくろむ左派政権や、環境を巡る様々な懸念、外部ばかりが富を得ることに反対する地元住民や先住民たちの抗議活動の活発化などにより、生産は難航しているのです。
リチウムが厳格に管理されているチリでは、ガブリエル・ボリッチ大統領率いる新左派政権が、環境保護規制や先住民の権利強化に配慮しているため、開発が思うように進んでいません。
チリはかつてリチウム生産で世界トップでしたが、その座を失ってしまいました。その一因は、1970年代から続く国による厳格な管理にあるといいます。
当時のピノチェト軍事政権は、核爆弾の原材料になりうることを理由にリチウムを戦略的資源に指定し、国家的な管理により生産量を厳しく制限してきたのです。
「ラテンアメリカは金の卵を産むガチョウを殺すのが得意だが、それを最も招きやすいのが資源ナショナリズムだ」
米シンクタンク、ウッドロー・ウィルソン・センターの中南米専門家であるベンジャミン・ゲダン氏はこのように話します。
バッテリー需要が爆発しているにもかかわらず政府の厳しすぎる統制や環境懸念などが足枷となり、EV革命に大きな影を落としています。
今回はバッテリー用金属としてリチウムを取り上げました。
次回は市場で大惨事をもたらしたりロシアが絡んでくるニッケルについて取り上げます。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/46398242464/4ca0bf4aa3/
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