海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第十回は、「ソニーのゲーム戦略、マイクロソフトとの戦い」と題してお送りします。
人気ゲーム機「プレイステーション5」(PS5)を手がけるソニーは先月29日、新たなサブスクリプション(定額制)サービスを発表しました。
既存のサービスに新たに二種類のサービスを追加し、クラウドゲームの「PSナウ」は廃止し、同じ機能が最上位の位置づけで新しいサービスに組み込まれます。
これは、マイクロソフトのゲーム機「Xbox」の定額制サービス「ゲームパス」の最上位サービスに対抗するものです。
両者の主な違いは、自社の制作した新しいゲームを、発売と同時に定額制サービスで提供するかしないか、というところにあります。
ソニーはこれをしないと決めたことで、ゲームのサブスクリプションよりは購入を好む層が生み出す収益との共食いを防ぐことができます。
これに対し、マイクロソフトは同日リリースという手法をとり、そのために二件の大型買収に乗り出したのです。
2020年には「フォールアウト」「ドゥーム」で知られるベセスダ・ソフトワークスを約75億ドル(現在のレートで9000億円以上)で買収し、さらにアクティビジョン・ブリザードの買収を計画しているのです。
アクティビジョンは、第二回「ビデオゲーム大手の誤算」でもご紹介した会社ですが、「ワールド・オブ・ウォークラフト」や「コールオブデューティー」、「キャンディクラッシュ」などの大人気シリーズをかかえており、数億人規模の月間アクティブユーザーを持つ巨大な買収になりえます。
ゲームとネットワークサービス部門は、ソニーにとって最大のセグメントとなっており、売上高と営業利益は三分の一を占めるまでになっています。つい十年前はビデオゲームは八分の一を占める程度でテレビや携帯音楽プレーヤーに頼っていた会社でした。
ソニーは最終損益を重視する戦略をとっており、ゲーム部門においてマイクロソフトの追い上げに対して競り勝ってきています。
PS5の売り上げ台数も、マイクロソフトのXboxを大きくしのいでいます。
しかし、ソニーのキャッシュフローはマイクロソフトの一割程度しかなく、これほどの規模で競争する資金力はありません。
新作ゲーム公開を定額制サービスで行うには投資レベルが足りないのです。
マイクロソフトの猛追をしのげるか、ソニーの戦略選択が正しかったのか、これからが注目です。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/50555151483/c4f546ffff/
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