海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第十二回は、「米アマゾン・ドット・コムの動向」と題して、eコマースで圧倒的な支配力をもつ巨大企業の動きについて見ていきます。
20年余りにわたり急成長をとげてきた米アマゾンの電子商取引(eコマース)事業にかげりが見えてきました。
1-3月期売上高は過去20年で最も低い伸びにとどまり、創業以来まれに見る低成長局面を迎えています。新型コロナ禍で急増した需要に対応するため、人材採用や物流拠点の拡充に巨額の投資をしており、インフレの高まりと米経済のマイナス成長が重なり、業績に大きな痛みが広がりました。
会員制サービス「アマゾン・プライム」の会員数も向こう数年間に増加率が大きく鈍化すると予想されています。米国内でこれ以上伸びが見込みにくいほどにアマゾンのサービスが浸透しつくしていることを物語っています。
とはいえ、独自のクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」は高成長を維持しており、アマゾン幹部らは全体的な業績は年内には上向くと見ています。
しかし、アマゾンは世界的なサプライチェーン(供給網)の混乱を切り抜ける必要があり、これが業績の足かせとなっています。インスタカートやドアダッシュといった小規模な競合たちは、配送プロセスにおける最終段階しか気にしなくてよいため、これらの小規模競合勢が食料品などのカテゴリーでアマゾンの強力な牙城を切り崩しています。
ここにきて、アマゾンの物流部門の野望が競合他社の脅威となる可能性を見せています。
プライム会員向けのサービスの一部をアマゾンのプラットフォーム以外の販売業者にも広げて、フルフィルメント(通常の受注から決済まで)などのサービスをサードパーティのサイトに組み込もうとしています。
販売業者が自社のサイトに掲載した商品に「プライム」のロゴを表示して、アマゾンの迅速な配送オプションを提供できるようにする、「バイ・ウィズ・プライム」というものです。
アマゾンは、フルフィルメント、物流、サプライチェーンに投資する巨大プロジェクトを発表しており、宅配・航空貨物大手のフェデックスやユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)などの既存の配送大手にとって脅威となる可能性があります。
また、アマゾンの航空貨物事業部門の運航便数は大きく増加しています。
自社では運航を行っておらず、パートナー企業に頼っているのですが、「アマゾン・エア」の尾翼マークがなくても実質的にアマゾンにサービスを提供している「影の運航便」も実際には多いのではないか、と言われています。
旅客機需要が激減し使われなくなったジェット機が中古市場に流入し、貨物便への転用が急増したことを背景として、アマゾンは航空機の購入を始めました。
航空貨物会社の株式の保有もしており、こうした戦略は、フェデックスやUPSの領域に事業を拡大する予兆とも見ることができます。
長距離型のボーイング「777」やエアバス「A330」がアマゾンの運航機材として導入される可能性があるとも報じられています。
物流分野において、アマゾンは全く新しい収益源を得ようと戦略的な動きを示しています。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://www.pexels.com/ja-jp/photo/4560039/
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