海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第十九回は、「中国経済の減速とインフレ緩和」と題してお送りします。
中国経済がこの一年で急に減速したことにより、専門家らの間で予想や見通しを修正する動きが広がっているようです。
中国がいつ米国を抜いて世界最大の経済国になるか、その時期を巡って議論がなされ、そもそも米国超えはあり得るのかどうかという懐疑論も出始めているのです。
中国では、当局による「ゼロコロナ政策」や不動産市場における投機抑制政策により、成長に急ブレーキがかかっています。不動産価格の低迷と輸出需要の減少に苦しんでおり、様々な問題が山積しています。成長の足かせになる人口動態の問題がそれであり、労働人口の縮小や生産性の低下、インフラ投資のリターン低下などに悩まされています。
豪有力シンクタンクのローウィー研究所は、中国が経済成長だけで米国に対して著しく優位に立つことはできず、中国による米国超えの時期は後ずれするとともに、決して米国を超えることはない可能性も高まった、との見方を示しました。
中国経済の減速はあくまでも一時的なものであり、米国超えの時期が少し遅くなっただけだ、との強気の見方をするアナリストもいるものの、全体的に中国経済の見通しはかなり暗いものだとする傾向が強まっています。
中国をはじめとする世界的な景気減速により、主要な輸入品とコモディティ(食料、エネルギー、貴金属といった実物資産)のインフレ圧力が緩和されています。
中国成長が減速する中、銀行口座の凍結や未完成住宅の住宅ローンの支払いをめぐって猛烈な抗議行動が勃発しており、煮えたぎる不満とそれを当局が巧妙に隠している実態がそこにはあります。
開発投資の低迷は、産業用およびエネルギー商品の需要を押しつぶします。資源に飢えた経済が失速することで、コモディティ価格に下落圧力がかかるのです。中国のコモディティに対する欲求が抑制され、中国の工場が価格上昇に抵抗する動きが強まることで、世界的なインフレ圧力が緩和される可能性があるのです。
米国とのデカップリングがこれ以上進めば中国は孤立を深め、諸外国からの知識の流入がとまり、発展することが難しくなる恐れもあります。
ある専門家は、「経済がそれぞれの国が相互に恩恵を受けていることを見失ってしまうと、双方の国が揃って損をしてしまったり、行き過ぎた経済規模比較によりナショナリズムを誘発し、双方に酷い悪影響を及ぼしかねない」と指摘しています。
文章:増何臍阿
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