夕暮れ時、自転車で買い物に行く途中のことでした。
その時は、いつも通る道とは一本違う道を通っていました。
赤信号で止まっていると、ニャーニャーと猫の鳴き声がしました。
辺りをキョロキョロと見渡すのですが、どこにも猫が見当たりません。
信号が青に変わりました。
その辺の物陰にでも潜んでいるのだろうと、気にせず走り出しました。
しばらく走行して、また赤信号で止まったときに再び、
ニャー、ニャー
と猫の鳴き声がしました。
驚いたわたしは自転車を降り、自転車をくまなく調べました。
― 誰かがイタズラして、自転車に猫をくくりつけた ―
と思ったのです。
その時にまた、
ニャー、ニャー
それはよく聞くと、猫の鳴き声というより、呻き声のような感じに聞こえました。
それは上から聞こえてきました。
上空を見渡すと、電線に黒くて丸いものがありました。
黒猫がそんなところにいるはずないし、カラスにしては丸すぎるし、
黒いビニールが引っかかっているのかな?
それは夕映えが逆光になって真っ黒な影になっていたのです。
目を凝らしてよく見ようとすると、スーッと山へ向って飛び去ってしまいました。
その山はある武将の首塚がある場所でした。
文章:百百太郎
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