海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第二十二回は、「バッテリー用金属の動向その2」と題して、電池用金属であるニッケルに関する動きを見ていきます。
資源ナショナリズムや環境保護活動の高まりというグローバルな波により、ニッケル、コバルト、リチウムといった金属に対する世界的な需要が高まっています。
資源獲得競争が激しくなり、金属資源の豊富な低所得国にとって追い風になりそうです。
グリーン産業革命を追い風にして、こうした金属の生産国は影響力を増しており、その力を自国にとって有利になるように活用しようとしています。
気候変動に対応する輸送手段にとって欠かせない金属であるニッケルは、その重要性からモラルハザードやありえないこと、ジレンマなどを引き起こしています。
ロンドン金属取引所(LME)は今年3月、追証を手当できなかったトレーダーを排除せずに売買を取り消すことで救済してしまいました。
追証とは、レバレッジ(借り入れ)による取引で損失が発生した場合に、証券会社から差し出すよう求められる追加の保証金のことです。
取引所の当局が別のトレーダーから確保した資金で救済したため、本来なら巨額の利益を手にしていたトレーダーがいたのです。
この借金まみれの追証を手当できなかったトレーダーというのが、中国のニッケル生産大手、青山控股集団だったのです。被害が他のところに波及してしまうのを恐れた取引所は自由な市場という概念を粉々にしてしまいました。
ロシアの非鉄金属生産大手ノリリスク・ニッケル(ノルニッケル)の問題もあります。
その最高経営責任者がオリガルヒ(ロシアの新興財閥)であり、ロシアに対する制裁の対象とすべきなのですが、欧米諸国は自国の主要資源へのアクセスを損なうことなくロシアを罰するジレンマに直面しています。
制裁を科すことで資源が入手できなくなれば世界が大混乱に陥るため、取引を継続せざるを得ないという側面があるのです。
ノルニッケルはニッケルとパラジウムの生産においてあまりにも大きすぎる存在であるため、簡単に排除することができない難しさがあります。
ノルニッケルがあるノリリスクは世界最北の都市の一つです。鉱山・精製事業に関連する汚染が深刻であり、世界有数の汚れた都市だとの評価を受けています。
環境に良い輸送手段のための金属を生産する企業が酷い環境汚染の原因となっているのは、なんとも皮肉なことです。
このように、電池用金属として重要であるニッケルの周辺には、難しい問題やモラルハザードなどが山積しているのです。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/52335724970/2c0b9cb9b8/
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