海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第十四回は、「寿命を延ばせる? 科学者たちの模索」と題して、生物学的年齢や老化防止に関する研究について見ていきます。
生物学的年齢という概念をご存じでしょうか?
年をとった時の生活の質を決める役立つ健康の尺度の一つで、暦年齢よりも低い場合も高い場合もあります。
細胞や臓器の年齢は通常の年齢とは異なるという考え方に基づいたもので、これを知ることで、病気を予防したり先延ばしにしたりできると考える科学者がいます。
生物学的年齢によって、寿命をより正確に予測することが可能になる、と考える科学者もいます。
しかし、これを測定する標準的な方法はいまだなく、開発中のツールの多くは実証されていないため、寿命を予測できるという点に懐疑的な科学者もいます。
血液や唾液中のバイオマーカー(疾患の有無や進行状態の目安となる生理学的指標)を分析して生物学的年齢を計算する手法や、幅広い加齢パターンの個人を比較して算出する手法などがあります。
生物学的年齢への関心が高まっている背景には、エピジェネティクスの進歩があります。
エピジェネティクスとは、行動や環境が遺伝子の発現にどのように影響するかを研究する分野です。
自宅で生物学的年齢を検査できるキットを開発する企業があります。ほほの内側の細胞を綿棒で採取して、DNAの化学変化に基づいて年齢を判定するテストだと言います。
老化防止に効果があるとされる化合物を、うまく商売につなげようとする動きがありますが、それは誇大広告であると批判する科学者たちもいます。
老化をとめる有力な薬に、「メトホルミン」と「ラパマイシン」というものがあります。
糖尿病の治療薬として用いられたり臓器移植で拒絶反応を防止するために使われたりする
薬です。両方とも動物実験で長寿効果が確認されています。
別のものとして、「セニリティクス(老化細胞除去薬)」と呼ばれる新しい薬があります。
これは、細胞分裂を停止したのに体内に残り続ける有害な老化細胞を除去する役割を果たすのです。
長寿の夢を追いかけて、学術研究機関やバイオテクノロジー企業などが次々とアンチエイジング分野に参入しています。米国立老化研究所の年間予算は3000億円以上にものぼっています。
過熱する競争のなかで、安全性基準の確立や所得による不平等をなくすといった課題が山積しています。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/23020718109/e276bbce31/
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