サスペンス・ホラー

怖い話『ヘッドライト』

 

ぼくたちのサークルでは毎年、学園祭イベントの「サークル対抗駅伝」に出場しています。

新1年生は全員出場するのが慣わしです。

サークルの出場メンバーのうち、時間の空いた者が夜半に集まり大学のグランドで練習することになっていました。

グランドは大学から少し離れた河川敷にあり、すぐ隣は大きな駐車場になっています。

 

その時は新1年のうち4名ほどが集まり練習していました。

 

隣の駐車場から車のヘッドライトの光が飛び込んできました。

 

「おい、誰か来たみたいだぞ」

見ると、その光の中に人影がありました。

 

― メンバーのうちの誰かがバイトを終えて駆けつけてきた ―

 

と、ぼく達の誰もが思いました。

それ以外、こんな時間にグランドへ人が来るとは考えられません。

しかし、すぐにヘッドライトが逸れ、その人影も見失ってしまいました。

 

しばらくしてまたヘッドライトの光がこちらに向けられた時に、再びそこに人影が浮かび上がりました。

 

さっきよりこちらに近付いているようでした。

 

今度も光が逸れると人影も消えてしまいました。

ぼくたちは気味が悪くなり、そそくさと練習を切り上げて解散しました。

 

後日、駐車場入口近くのちょうど人影が立っていたあたりに、立て看板がしてあるのを見つけました。

それは数年前に発生したひき逃げ事故の目撃情報を呼びかけるものでした。

 

「これが人影に見えたのか?」

「いいや、あれは紛れも無く人の形だった」

 

文章:百百太郎

 

関連記事

関連記事

  1. 怖い話『呼んでるよ』
  2. 怖い話『とある砂浜での出来事』
  3. 怖い話『白い部屋』
  4. 怖い話『抜け道』
  5. 怖い話『案山子』
  6. 怖い話『こぼれる光』
  7. 怖い話『ウォータースライダー』
  8. 怖い話『終着駅』

おすすめ記事

支援者ができるのは一つだけ【障碍編】

 障碍者支援の場で、支援者に悩みを相談するメリットは薄い。 一番の理由に挙げられ…

正論よりも生きたいように生きる

 正論なんてどうだっていいから、僕、私は自分のやりたいように生きたい。そのような考え…

休むことなく、働き続ける髭

 髭をそるのは面倒くさい。 ムダ毛に限ってどうして生命力が高いん…

ドコモで顧客を侮辱したメモが渡された

  ドコモショップにおいて、「親代表の一括請求の子供なのでクソ野郎」と書かれた、メモ…

世界の国と国旗☆第93回目 セントビンセント及びグレナディーン諸島

出典:©Copyright2023 世界の国旗.All Rights Reserved.皆様こん…

新着記事

PAGE TOP