海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第十八回は、「金相場低迷の背後には」と題して、金相場低迷の背景を探ります。
現在、中国人民元がドルに対して下落基調にあります。このことが、金強気派にとって頭の痛い問題となっているのです。
ここ最近の金先物のさえない動きは、金利上昇によるものであると見る向きが多いです。
リスク回避目的で普通であれば金に向かうマネーが、FRBの利上げで利回りが上昇している米国債に向かっているからです。
FRBが何よりインフレ退治を優先するとの見方が広がったことにより、リターンの低下を警戒するヘッジファンドなどの投機筋が、金の上昇を見込んだ取引を手仕舞いしていることが背景にあります。
これに加えて、中国も金相場に大きな影響を与えている、と専門家は指摘します。
世界の個人向け金販売で中国人消費者は全体の約3分の1を占めていて、人民元の下落によってその購買力が落ちているためだといいます。
新型コロナウイルス流行を受けた都市封鎖や住宅販売の冷え込みにより、中国経済に急ブレーキがかかるという懸念を反映して、元は年初来、対ドルで5%余り下落しました。
中国経済の減速を示す指標が発表されたことも、元売りの材料となっています。
不動産開発業者の苦境や消費者信頼感の低下、「ゼロコロナ政策」の影響など、回復見通しを曇らせる要素に事欠きません。
1ドル7元まで人民元が下がると予想するアナリストもいます。
大規模な資本流出が起こるとは限りませんが、元安は過去に国際金融市場における不吉な兆しとなったことがありました。2015年に中国株暴落とともに人民元が急落し、人民銀による事実上の通貨切り下げがこれに拍車をかけて、金融市場は世界的に混乱しました。
ドルの独歩高により他の主要通貨が下押しされます。米国以外の買い手にとって、金は割高となります。
しかし、ゴールドマンサックスのストラテジストは、来年にかけて景気減速やリセッション(景気後退)への懸念が高まるのに伴い、金相場はいずれ上向くとみています。
ここにきて世界経済の成長見通しを引き下げる動きが広がっており、バンカメ(*1)のアナリストは、主要国のおよそ半分は景気後退入りすると予想しています。
金が反発するシナリオは消えたわけではなく、単に先送りされただけかもしれません。
来年にかけて景気後退がすすめば、再び金の上昇が始まる可能性があるでしょう。
*1…バンク・オブ・アメリカ:バンカメリカやバンカメの略称で呼ばれることもあり、英語の略称はBofAである。ニューヨーク証券取引所上場企業(NYSE: BAC)
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/3442925763/eca25cf59b/
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