わたしが小学生の時の、ある夏休みの昼下がりのことです。
親に言いつけられていた水撒きを終わらせ、
風通しをよくするために家中の窓を全開にして、ひとり寝転がってテレビを見ていました。
ふと、何やら気配を感じたので振り向くと、窓の外から友人がこちらを覗きこんでいました。
「うぉおおっ、ビックリしたー。何してんねん、入ってこいや」
わたしがそう言うと友人は、ニコッと笑って玄関のほうへ消えていきました。
ところがいつまで待っても友人は入ってきません。
気になったわたしは、その友人の家へ行ってみました。
家には友人がいました。
「さっきうちに来てたけど、何やったん?」と聞くと友人は、
「行ってへんで」
今日は自宅から出ていない、と言うのです。
― あいつ何でとぼけるんだ? ―
などと首をかしげながら自宅に戻ってきた際に、何気に窓の下を見ました。
そこは水撒きでぬかるんだ状態だったのですが、
足跡が全く残っていませんでした。
あれが世に言うドッペルゲンガーだったのでしょうか?
文章:百百太郎
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