海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第十一回は、「木造高層ビルという新たなトレンド」と題して、建築界で新しいトレンドとなりつつある木造高層ビルについて見ていきます。
上の写真は、「ブロック・コモンズ」という建物で、カナダのブリティッシュコロンビア大学の学生寮です。
バンクーバー市内に2017年に完成したこの建物は、木を多用した建造物として世界的な水準の高さを誇ります。
カナダ天然資源省によるプロジェクトにより実現されたのですが、新しく開発された「マスティンバー」という木質材料を使って建設されました。
この「マスティンバー」は、複数の木材を圧着し驚異的な強度を持たせた集成材です。
CLT(直交集成板)というのがひとつの技術であり、木の繊維が直交となるように接着された厚型パネルであり、軽量のため優れた耐震性をもち、近年の研究によりコンクリート並みの強度を誇るようになったといいます。
木造建築は火災リスクが高いため、法令で規定された耐火性能を満たす必要がありますが、その点もクリアしています。さらに断熱性が高いため、避難の時間も確保できるのです。
木造ビルを推進する人たちは、地球環境にとてもやさしいメリットがある、と主張します。
「伐採した木材で建築した場合のCO2排出量に目を向けると、コンクリートと鉄骨の建築物よりもはるかに良い数値が得られる」。
メーン大学で持続可能な素材と技術を専門とするスティーブン・シェイラー教授はそう指摘します。
「持続可能な方法で管理された森林があり、我々にその能力がある限りは、木材による建築の方がCO2排出量の点で明らかに勝る」とも言います。
今後、さらに野心的なプロジェクトが登場する可能性があります。
日本の住友林業が東京に70階建ての木造ビルの建築を提案しているほか、英国の建築事務所もロンドンに80階建ての超高層ビルを計画しています。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/40226625982/7dc600c4aa/
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