これは大学の先輩から聞いた話です。
ある日の昼下がりのこと。
ベランダで洗濯物を干し終わって部屋に戻ると、見知らぬ背広姿の中年男性が部屋の隅に立っていました。
先輩は突然のありえない出来事に反応できず、その場に立ちすくんで男を凝視していました。
しばらくにらみ合いが続いたあと、男は言いました。
「△□新聞やけど、新聞どことってる?」
「○×新聞ですけど」
先輩が怪しみながらもそう答えると、男はがっかりした様子で玄関へ向って進み始めました。
部屋を出るのかと見ていると、その男は玄関のすぐ脇にあるトイレのドアを開けて入ってしまいました。
いつの間にやら部屋にあがりこんだ上に、断りも無くトイレまで・・・。
あまりの勝手な振る舞いに怒った先輩は、勢いよくドアを開けました。
そこには男の姿はどこにもありませんでした。
その瞬間、先輩はこう思ったそうです。
「このドアは、『どこでもドア』になってしまったのか!?」
文章:百百太郎
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