コラム

小説:『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(6)』

前回まで

・『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(1)

・『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(2)

・『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(3)

・『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(4)

・『借金を完済した直後にあの世に旅立った女性は異世界に転生(5)

 

前回からの続き

 

 アヤカは三日間、家でのんびりとしていた。一日二一時間働いていた頃が、幻のように感じられた。

 

 二日目からの食事はあまり食べられなかった。空腹になるのは、洞窟に潜ったあとだけのようだ。

 

 米についてもとてもよかった。ケーキを感じさせるような甘味は、米を食べているとは思えなかった。

 

 米以外の食料が底をついたので、スーパーに買い出しに行こうと思った。今回は肉ではなく、魚を中心に購入しようかな。

 

「アヤカです。三日前にここに引っ越してきました」

 

「ミサトです。よろしくお願いします」

 

 ミサトと名乗った女性は二〇歳前後といったところか。若いからか、肌にみずみずしさを感じた。

 

 理想的な肌の色をしている。アヤカのように淀んだところは全くなかった。

 

 ミサトはどういうわけか一歩だけ後ろに下がった。警戒されているのかなと思ってしまった。初対面の人に怖がられるのは心外だな。

 

「体内からすごいエネルギーを感じます。レベルは85~95といったところでしょうか」

 

 レベルをどのようにして測定したのか。鑑定士の力を持っているのかな。

 

「アヤカさんなら、洞窟のラスボスを倒せるかもしれませんね」

 

 洞窟のラスボスを倒さなくとも、十分に生活できる。最低限の生活さえ確保できれば、それ以上を望むことはない。 

 

「洞窟のラスボスは強いんですか」

 

「普通の人は倒せません。レベル50で挑んだ人もいますけど、帰ってくることはありませんでした。過去に5人くらい挑戦したけど、全滅だったようです。永遠に帰らぬ人となりました」

 

100万ゴールドを入手できるというボスは、一筋縄ではいかないのか。大金が簡単にもらえるのなら、誰も労働などしない。

 

 米が20キロで1ゴールドの世界である。100万ゴールドを入手しても使い道がない。貧しい人に寄付をするしか有効活用は見いだせない。

 

「アヤカさん、私の妹の命を助けてください。手術するためには、50万ゴールドが必要なんです」

 

 医療費は高い世界なのか。命に優しいと思っていたけど、ある意味ではシビアといえる。病人は死ねといっているに等しい。

 

「こんなことをお願いできるのは、アヤカさんだけです。他の方にはお願いできません」

 

 他人の命を助けることよりも、ラスボスはどれくらいなのかが気になる。アヤカは話にのることにした。

 

「わかりました。100階のボスを倒してみましょう」

 

 レベル90もあるし、無限復活、異常防止のスキルを所持している。失敗したからといって、死ぬことはない。

 

「ありがとうございます」

 

 アヤカは冒険に旅立つ前に、ミサトに条件をつけた。

 

「一つだけ条件があります。妹の様態を見せていただけなければ、お金はお支払いできません」

 

「私は信用されていないみたいですね」

 

「見ず知らずの人を信用できるほど、お人好しではありません」

 

 現実世界でどれだけの人に騙されてきたか。一時期は人間不信で、誰の意見にも耳を貸さない人になっていた。

 

「私はこういうものです」

 

 名刺のようなものを渡され、「緑の村 王女」となっていた。

 

この国で一番偉い人であることは分かると、アヤカは条件反射的に土下座をしていた。

 

「数々の非礼、無礼、大変申し訳ございませんでした。どうか命だけはお助けください」

 

 緑の村にやってきて、1週間足らずで処刑されるのは勘弁願いたい。現実では早くあの世に旅立ったので、こちらの世界では30年は生きたい。

 

「顔をあげてください。王女という身分だけで、ごくごく普通の人ですよ」

 

 普通の人とかいっておいて、テレポートとかの超能力を使用するかもしれない。普通という人ほど、普通ではないというのはよくあるパターンだ。

 

「アヤカさん、妹の命を助けてください。緑の村で魔王に勝てる人間は、あなただけです」

 

 人間? この村には人間以外の種別も住んでいるのかな。人間だけが住んでいるように見えて、実は多民族国家なのかもしれない。

 

 そんなことよりも、ミサトの妹の命を助ける方が先だ。アヤカは洞窟に向かって、歩を進めることにした。

 

 アヤカはボスを倒すことができるのでしょうか。

 

文章:陰と陽

画像提供元 https://foter.com/f6/photo/44682896670/0a245c630d/

 

 

関連記事

  1. 映画『ミザリー』をご紹介
  2. 課金は塵も積もれば山となる
  3. 自分の中に他者の視点を
  4. 過剰な誉め言葉はやめましょう
  5. 区切りが着いた
  6. メジャーのピッチクロックで感じたこと
  7. 猫が可愛い理由?それは、猫だからです
  8. 心臓がトリプルアクセル!

おすすめ記事

【海外ニュースウォッチ】世界に丸見えのロシア軍【第三回】

海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリ…

病院関係者のマスク不足

 新型コロナウイルスの影響を受けて、病院関係者の間においてもマスク不足が露呈。病院に…

怖い話『塀の裏側に見たもの』

それは駄菓子屋でアイスを買った帰りのことです。帰り道を急いでいると、いいタイミン…

価値観の違いについて

恋愛の価値観はみんな違う。 それは当たり前のことで、普通なこと。 そもそも、…

究極の成功法則

それは、継続です。「継続は力なり」だからです。…

新着記事

PAGE TOP