コラム

瀬木 比呂志『絶望の裁判所』講談社現代新書

瀬木 比呂志『絶望の裁判所』

 

元裁判官である著者が裁判所の組織内部で進行している統制的な支配体制を暴き出し、それを告発形式で批判的に綴っているのが本書です。

 

一般的にいいますと、裁判所の判断というものは、国民に対する権力側の押し付けを、ある一定の均衡力を持って抑止することが期待されています。

たとえば、司法が健全に機能しなくなれば、市民の利益に反した判決が野放しにされたままになり、結果的に国民生活における自由が抑圧される方向に向かうことは間違いないからです。

 

裁判官が事件をまともに審議すらせず、過去の判例に添った判決を出し続けたり、あるいはある事件に対して、良識的な判決を出すことに躊躇し、半ば強制的に和解を勧めたりするのは、事件を担当した裁判官個人の出世に差し響く可能性を示唆しています。その他、裁判所内に蔓延する非民主的な「キャリアシステム」など、旧態依然とした環境的要因が影響し、彼らがそこにとどめ置かれているからだと本書では指摘します。

 

腐敗構造が蔓延化すれば、自ずと自浄作用が機能しなくなるため、システム上の不備は内部で隠蔽されることになりかねません。

 

著者はさらに、その諸悪の根源となっているものが、全ての裁判官の人事権を握っている「最高裁判所事務総局」だと言い放ちます。(最高裁判所事務総局の弊害については、他の本でも既に指摘されているところ)

 

公正・公平な裁判が阻害されている要因を詳しく知りたい方には手にして欲しい一冊で、お勧めの本だといえます。

 

文章:justice

関連記事

  1. 井の中の蛙はヤドクガエル
  2. ひたすらに書く!
  3. スタンレー・ミルグラム『服従の心理』河出文庫
  4. 利用者に暴力をふるう前に介護職をやめるべき
  5. 国民は怒っていた
  6. 読書の秋ですね
  7. 君は一人じゃない
  8. アトピー性皮膚炎が高血圧の薬を飲んだ結果

おすすめ記事

頑張る、努力するという概念を捨てよう

 日本では頑張った、努力したと口にする人で溢れかえっています。私も耳にタコができそう…

『輝き続けた…』―自分を信じる力が大切―

輝き続けた空の下に…存在する私達。だから……

メンタルが大事

身体が健康であることも重要なことですが、メンタル面も健康であることが重要であることは、誰もが思うとこ…

社会は多数派のためにある

 社会では健常者と障碍者と呼ばれる人たちが生活を送っている。 健常者と障碍者の定…

採用面接官が障碍者を不採用にする理由

 障碍者枠で人事担当をした人間の本音がインターネットで書かれています。一部を上げてい…

新着記事

PAGE TOP