海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けするシリーズです。
第六回は、「ESG投資の疑問」と題して、昨今のクリーンエネルギー関連の話題をとりあげます。
ESGというのは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字をとったもので、持続可能な投資によって地球温暖化を食い止めようという投資家らの考えが重要視されたものです。
ESG投資家らの主張は、「環境・社会・企業統治(ガバナンス)の基準に基づく投資は、世界をより良くするだけでなく、より多くのリターンが得られる」というものです。
しかし、そのような主張には疑問を抱かざるをえません。
例えばグリーン債というものがあります。グリーン債とは、政府や企業が調達資金の少なくとも一部を環境に配慮した用途に振り向けることを約束した債権で、世界の発行総額は過去最高となってはいます。
しかし、グリーン債は同じ発行体の通常債と比べてやや利回りが低く、さらに、こうした債権の発行が環境を良くするという証拠がどこにもないのです。
善い行いをすることと利益を手にすることが両立しないのは、こうした債権に歴然と現れています。
環境のために化石燃料を採掘する会社の株を売却したとしても、その会社の株の保有者が採掘場を閉鎖しなければ、温室効果ガスは放出され続けます。
化石燃料を掘り出さないことの損失を、誰かがかぶらなければなりません。
現状、ESG投資家は利益を追求することはあっても、損失を被ることはやはり避けています。
ウォール街は積極的にESG投資を勧めますが、徳と利益は結局のところ両立はしません。
「世の中のためになることをしたい」「ええことをしている」という思いに浸りたい投資家が、同時に利益も追求する。そうした声に応えて債権や株を販売する。
しかし実際のところは世界をより良くするわけではなく、そのように見せかけているだけ。
というような、なんとも欺瞞に満ちたやり取りが、平然と行われています。
昔の社会学者が書いていました。
過剰な利益追求は他人から分捕らなければ実現できないのだから、それじたい徳のあることだとは見なし得ないことだ、と。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/2799245138/26e7f5f50a/
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