海外のニュースから、筆者が気になったものをピックアップしてわかりやすくお届けする新シリーズです。
第一回は、「コングロマリット(複合企業)のゆくえ」と題して、新旧巨大企業のあり方とこれからについて見ていきます。
コングロマリットとは複合企業のことで、多くの産業を抱え多業種間にまたがる巨大企業です。
積極的な企業買収などを通して事業を多角化している企業です。
昔ながらのコングロマリットが、会社分割を行っています。
ゼネラルエレクトリックやジョンソンエンドジョンソン、東芝やシーメンス、デュポンやユナイテッド・テクノロジーズなどの名だたる巨大企業の解体が相次ぎました。
この背景には、「コングロマリットディスカウント」というものの存在があります。
コングロマリットの企業価値を、各事業体の価値を合計したものよりも投資家らが低く見積もることをいいます。
各事業体がシナジー効果を生むのではなく、かえってお互いに邪魔しあう結果になってしまったことなどが原因とされています。
これに対し、新しく登場してきたコングロマリットは、超巨大IT企業としてインフラとしての役割を持ち、様々な事業を抱えるにもかかわらずコングロマリットディスカウントはありません。
巨大ハイテク企業は、自らの製品やサービスを独自のプラットフォームに一体化させて展開しており、例えばアップルの場合、その製品すべてがひとつのプラットフォームを形成しています。
そのほかには、古いタイプのコングロマリットと異なる点としては、「ネットワーク効果」というものが挙げられます。
これは、ユーザーが増えるほど製品やサービスの価値がどんどん高まっていくことです。
例えばSNSでは、多くのひとが他人と同じ場所に行こうとするため、寡占や勝者総どりが生じやすいのです。
人が集まれば集まるほど、広告主の利益は大きくなります。
新しいコングロマリットは、プラットフォーム企業としてネットワーク効果を最大限に活用し、「需要サイドの規模の経済」を追求していきます。
昔のコングロマリットは産業型であり、「供給サイドの規模の経済」を追求していました。
これは、「作れば作るほど安くなり、生産量が増える」というものであり、市場を独占するより前に企業の規模の経済は力尽きていました。
しかし、新コングロマリットは、これとはまったく異なる種類の規模の経済を追求できます。これは、プラットフォーム企業がネットワーク効果を活用するからこそできることなのです。今でいうところの、アメリカのビッグ・テック企業であるGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)をイメージすれば、凡その見当がつくかと思います。
このように今後ますます成長が見込まれる新コングロマリットですが、不安要素もあります。
それは、上で見たように寡占(あるいは独占)へと向かいやすい傾向があることから、反トラスト法(日本でいう独占禁止法)を巡る各国政府の対応いかんによって成長が阻まれる可能性があるということです。中国や欧州、米国などで現実的な要素となっています。
文章:増何臍阿
画像提供元 https://foter.com/f7/photo/42001389082/775afbe21a/