コラム

ショートショート『脳の器質的な損傷を改善する手術』

 

 科学者は以前からどのようにすれば、発達障碍者、知的障碍者を救えるかについて知恵を絞った。当事者の脳内を容易かつ安全に書き換えることが一番であると結論づけた。

 1000人の科学者は脳の理論について研究、色々と議論を重ねながら一つの結論を導き出した。

 科学者は人体実験になる障碍者を募集。脳内の手術に失敗した場合は、1億円を払うという条件が盛り込まれていた。

 障碍脳とおさらばしたいという当事者は多く、知的障碍者から多数の応募が寄せられた。彼らはわずかであったとしても、普通の人間として生きる道を選択した。

 科学者の理論に基づきながら、医療関係者が脳に改造手術を施した。

 当初は失敗率が高く、90パーセント以上にのぼった。成功したとしても副作用が現れることが多く、多くの人間が不自由な生活を送ることとなった。

 多数の失敗例があっても。応募者は陰りを見せなかった。当事者として生きるくらいなら、万が一の確率にかけてみたい。まともに生活できない日常からの脱却を願う障碍者は多かった。

 科学者は数少ない成功例を参考にしながら、障碍者の脳を改造手術を続けた。変人として扱われてきた彼らだからこそ、当事者の苦しみを人一倍わかっている。

 データが揃ってきたからか、成功率は上昇の兆しを見せた。近年では成功率が30パーセントを超えるようになった。正常な脳を手に入れた元知的障碍者は、一般人と何ら変わりない生活を送っている。

 科学者、医療関係者の目標は成功率100パーセント。一人でも多くの人間が尊重される日々を送れるよう、力を尽くしていく。ただし、個体の優劣を競う思考形態は、優生学に繋がる可能性もあるため、慎重に期して取り扱わなければならないことを申し添えておく。

 

文章:陰と陽

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