私は高校生のときに夕刊配達のバイトをしていました。
いつものようにある家の郵便受けに新聞を入れようとすると、水浸しなのに気付きました。
見ると周囲もやけに水浸しです。
今日一日天気が良かったのに変だな、と思いながら門の中を覗き込むと、
そこの中学生の女の子が、玄関脇にしゃがんで植木の手入れをしていました。
― ああ、植物に水を与える為にまいたのか ―
と、私は納得して新聞をそのまま郵便受けに入れて、その場を離れました。
一週間ほどしてその家の郵便受けに新聞を入れようとすると貼り紙がしてありました。
それには『新聞を入れないで下さい』と書かれてありました。
変に思った私は何気にその家の二階部分を見上げました。
― ん? ―
なにやら違和感を感じました。
角度を変えて見ると、二階の表面壁の裏側が真っ黒に焼け落ちていました。
販売所に戻って店主にそのことを話すと、
「ああ、そうや。あの家、先週火事になったんや。娘さんが亡くなりはったんやて」と言うのです。
すると、あの玄関脇にいた女の子は誰だったのでしょうか?
家も近所で幼い頃に遊んだこともある子なので、見間違えるはずないのですけれど・・・。
文章:百百太郎
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