コラム

『友がみな我よりえらく見える日は』(幻冬舎アウトロー文庫)のご紹介

 

本書は、上原隆によるノンフィクションです。

著者の上原氏は、評論家の鶴見俊輔を師匠とするライター・コラムニストです。

 

「ひとは、こころが折れたとき、なにを支えに生きていくのか」

というテーマで、市井に生きるふつうの人々を取材します。

 

タイトルは、石川啄木の歌集「一握の砂」のなかの以下の代表的な短歌からもじったものです。

 

友がみなわれよりえらく見ゆる日よ

花を買ひ来て妻としたしむ

 

 

 

病気に苦しむ人や容姿に悩む人、失業問題や人間関係に悩む人など、ごくごくありふれた普通の人に対して、著者はインタビューをします。

 

世間で話題になるのは有名人や著名人であり、ふつうに生きる私たちと同じような人たちが

本当のところどんな風に生きているのかを知る機会はあまりありません。

 

レビューなどでは、つらい立場の人の話を読んで他人の不幸を喜ぶ後ろ向きな本だという評価もあり、たしかにそれはそうかもしれません。

 

しかし、そういうものが必要な時というのもあるし、仕方ないところもあるので、あまり追い詰めて考えないほうがいいということもあると思うのです。

 

前向きにパワフルに生きている人は手に取る必要のない本ですが、つらいのは自分一人ではないことを知る意味でも、自分を支えるための一助となり得る本なのではないでしょうか。

 

 

文章:増何臍阿

関連記事

  1. エッセイ:『F君のこと』
  2. 短編小説:『寝過ごして』
  3. ショートショート『インフルエンザ菌のイタズラ』
  4. 幸福追求権
  5. ネットリテラシー、重要。
  6. 大相撲の十両、幕下の入れ替え予想(2023年11月場所の成績に基…
  7. 小説:『自分の道(2)』
  8. 自分の作品を紹介するぜ!

おすすめ記事

人の見えかた

人は、同じ人であっても、人に対する見かたは変わるものです。その人…

実写はわら人形

出典:© いらすとや. All Rights Reserved.受け入れられない実写最近…

平常心を保つこと

常に平常心を保っていきたいものですね。人は、心が乱される時がままあると思います。すご…

怖い話:『蹴りたいドア』

夜11時少し前。オフィスは暗くしんとしていて、私は明日のプレゼンのパワポ資料を作…

台風について①

9月2日の9時にフィリピンの東で発達中の熱帯低気圧が「台風13号」になりました。名前…

新着記事

PAGE TOP