深田萌絵『ソーシャルメディアと経済戦争』
過去に、ご自身で立ち上げたIT企業の経営者としての体験談を交えた上で、ITビジネスアナリストとして、中国や台湾を中心にした世界の動向を読者に伝えています。
さらには日本のIT業界の行方を「中小企業の生き残り戦略」というキーワードから紐解き、日本におけるIT業界の今後の展開を分析していました。
著者は、時に自己保身に走る傾向が強い世間の動向に左右されることなく、自分の体験や学びから、生きた知識を吸収して、それを実践の中に取り入れる手法を採っています。つまり、形式論の範疇を飛び出して、世の中のありのままの姿を描き出す才能に長けていることが、本書の端端から伝わってくるような内容です。
また中小企業を優先したいという著者の思いは、大企業を優先した政策批判にも表れていました。
たとえば、「輸出戻し税」という政策によって、消費増税の裏側で大企業群は「消費税の還付金」で儲けることが出来る仕組みが備わっていることを本書の中で指摘しています。
著者は、IT業界では中国や台湾の台頭があって、技術の基盤のところで彼らがシェアを取るため、他国に対して積極的に諜報活動を行なっていることを、本書の中で取り上げていました。
ややもすれば、GAFAなどの大手テックの動向に目を向きがちですが、その陰に隠れるようにして、中国の通信機器大手メーカーである「ファーウェイ」の躍進の凄まじさを描いていました。(特に「浙江(せっこう)財閥」や、その背後にいる「青幇(ちんぱん)のこと)
著者である深田さんの気概の現れは、以下の言葉から知ることができるでしょう。
日本人は安易な方向に流されやすく、中国から横やりが入り、外部からクレームが来ると「ごめんなさい」と土下座して逃げ出す。グローバル市場において「丸く収める」癖、「一歩引く」癖は、負け癖の始まりで、こういった部分から私たちは変えなければならない。
私たちは日本の体質改善を行い、この状態を打破しなければならない。(P261より)
文章:justice