出典:Photo credit: Editor B on VisualHunt
親の仕事の都合で、転校したことがある。
クラス担任に連れられ、教室に入ると、みんな真面目そうな生徒ばかりで真剣な表情だ。
そんな中で、窓際の一番後ろの男子だけが、満面の笑みをわたしに向けてきた。
ここではホームルームの時間に、額縁にある規律を全員で読み上げる。
「ひとつ、身だしなみに気を付けること。ひとつ、廊下で会ったら挨拶すること・・・」
などと読み上げている最中も、その子だけはヘラヘラと笑いながらこっちを見ている。
指示された席につき、1限目の授業を受ける。
授業が終わって振り向くと、あの席に誰もいなかった。
次の授業が始まっても、空席のままだ。
「早退したのかな?」
翌日、登校してみると、風邪で休んでいたという女子を紹介された。
その女子は窓際の一番後ろの、あの席に座った。
半年もたたずに前の学校に戻ったが、あの男子は誰だったのか、わからない。
文章:百百太郎