サスペンス・ホラー

怖い話『2位だよ』

 

中学生の時。

毎年春の最初の体育の授業で、校舎の周りを10周して、そのタイムを計る。

勢いよく走り出したものの、周りを見ると、自分の少し手前を行くものが一人いるだけで、みんな真面目に走っていない。

グループになって、談笑しながらゆるゆる走っている者もいる。

自分もそれに合わせてスピードを落として走った。

それでも2位につけていた。

 

角を曲がったところで、向こうの角を勢いよく曲がっていく者が見えた。

「2位だと思ったけど、さらに先頭がいたのか?」

1周目も終えていないのに、周回遅れがいるわけがないし。

次の角を曲がると、やはり向こうの角を勢いよく曲がる者がいた。

 

そんなことが何度かあって、ゴールした。

「俺、3位か」

というと先にゴールしていた奴が言った。

「いや、2位だよ」

「もう一人、前を走るやついたろ?」

 

体操教師の記録帳を覗いても、そこには1位であるべき生徒の記録はなかった。

 

 

文章:百百太郎

 

画像提供元 https://visualhunt.com/f7/photo/14677212978/7380655dde/

 

関連記事

  1. 怖い話『泣く傘』
  2. 怖い話:『夜中の子供』
  3. 怖い話『ずるいよ』
  4. 怖い話『地域ルール』
  5. 怖い話『壁の黒いしみ』
  6. 怖い話『押し入れにいたもの』
  7. ディストピア『見果てぬ、地平』
  8. 怖い話『ニュース番組』

おすすめ記事

【全ては自分】

人は前だけを見て生きることは難しいだけど前を見ないと進めないことは事実な…

『学校生活』―入学したと思えば、もう卒業―

あっという間の…学校生活だった。後何十日でお…

笑点55周年に松井秀喜さんが登場

 笑点の55周年にちなんで、松井秀喜さんが登場しました(背番号の55にかけている)。…

理と事

理とはやさしく言えば理屈、理論で、事とは事実、行動と言えます。本…

大坂なおみ選手が記者会見を拒否

 大坂なおみ選手が記者会見を拒否しました。今後も続くようなことがあれば、開催者側から…

新着記事

PAGE TOP