前野隆司著『実践ポジティブ心理学』のまとめ【第五回】
はじめに
「ポジティブ心理学」は、90年代にアメリカ心理学会の会長であったマーティン・セリグマン氏が提唱したもので、海外の学会でも大きな話題となり、ハーバードなどの講義でも人気になっているといいます。
ポジティブ心理学は、それまでの臨床心理学のように心の病を対象とするのではなく、普通の人が「どうすればもっと幸せになれるのか」を追求する分野です。
「マインドフルネス」や「レジリエンス」もポジティブ心理学の重要なキーワードです。
基本的には普通の健康状態にある人向けですが、著者は、心の病にかかっている人も生きるヒントを得られると言っています。
第五回は、「幸せの四つの因子」ということで、第四章のまとめです。
幸せの四つの因子
ポジティブ心理学の目的は「幸せになる」ことですが、強調されるのは幸せが結果であるだけでなく「原因」でもある、ということです。
まず小さくてもいいから「小さな幸せ」を作っていくことが、次にいいことが訪れる原因になっていく、というのです。
そこで、「幸せの因子分析」というものを著者の研究グループが行いました。
因子分析というのはたくさんのデータの関係を解析する手法の1つで、幸せに影響する要因についての大変多くのアンケート結果をコンピュータに入力して分析をさせ、その構造を明らかにする方法です。
こうした手法をとることで、客観的で実証的な分析を行うことができる、と著者は主張します。
第二回と第三回でご紹介したPERMAやSPARKよりもさらに客観性をもった要素である、と言います。
この因子分析の結果、次の四つの因子が得られました。
第一因子:「やってみよう」因子(自己実現と成長の因子)
第二因子:「ありがとう」因子(つながりと感謝の因子)
第三因子:「なんとかなる」因子(前向きと楽観の因子)
第四因子:「ありのままに」因子(独立とあなたらしさの因子)
幸せに影響することが分かっている因子のうち、心的要因のみがピックアップされています。外的・身体的要因はみずからがコントロールしにくい要因であるためです。
そして、地位財ではなく非地位財を重視しています。
地位財というのは「お金・地位・もの」であり、非地位財は「健康、自主性、社会への帰属意識、良質な環境、自由、愛情」などです。
これらの非地位財のうち、自分ではコントロールできない環境などの要素は排除されています。地位財は、得たときは瞬間幸せになりますが、その幸せは長くはつづきません。
非地位財は、幸せが長く続くうえでとても大きく寄与するものなのです。
自分がやりたいことや目標があり、そのために学習・成長しようとしていることが一致していること、周りのひとたちとのつながりを大切にし、感謝をもつことができること、楽観性をもち気持ちの切り替えがスムーズに行え、自己受容ができること、
他人と自分を比較することが少なく信念が揺らぐことがない、といったことが幸せにつながるといいます。
これらのうち、自分に足りない部分をみきわめて、そこをのばそうとすることがよい、と著者はいいます。
どれも足りない、という人は、まず「感謝」することから始めるのが一番いいのでは、と著者はすすめています。
文章:増何臍阿
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