ある日、垣根のうえの猫と目が合いました。
こちらが口笛を鳴らすと、にゃーと返してくれます。
それから、縁側の石のうえにエサを置く習慣ができました。
今まで見かけた野良猫たちはとても警戒心が強く、
なついてくれそうな気配はまるでなかった。
けれど、垣根のうえの猫は、手のひらのエサを食べてくれるまで
そんなに時間はかからなかったのです。
ある夜、いや、夜というより明け方に近いような時間だったかもしれません。
窓のところでバン!と大きな音がして、なんやなんや、と見てみたら
垣根のうえの猫が、窓の桟の狭いところに脚をのばしてないているのです。
当時住んでいた家のわたしの寝室は一階にあり、猫がジャンプして
これる位置に窓があるとはいえ、驚きました。
わたしは猫を部屋にいれて、朝まで過ごしました。
それから十数年。
猫は命を終え、お寺で供養してもらいました。
猫の名前は「みーこ」。
この物語は、わたしとみーこ、そしてさまざまな人々とのふれあいを
描いたものです。
つづく
文章:parrhesia(ぱれーしあ)